こんにちは、ハロボ編集部です!火曜日はお悩み相談「鳥の頭で考えた。」の日です。回答者は、アルファペンギンとして鋭いツイートを日々発信する鳥さんです。
悩み:元彼をSNSで見つけた。連絡を取ってよいのでしょうか?
30代会社員です。鳥さんの言語感覚とくちばしの鋭さにいつも胸を突き刺されています。高校時代に同じ部活の後輩と付き合いました。性的な関係も含め、大学まで続いたのですが、ふとしたことで大喧嘩。多分僕に原因があったのだと思います。結局、メアドなど全ての連絡先を消して忘れようとしました。
しかしSNS全盛の今、何となく彼の名前を検索してしまいました。年齢は重ねてはいたけど、相変わらずかわいらしい笑顔の彼がいました。連絡手段もわかりました。
そこで相談です。彼に連絡するべきなのでしょうか。それとも近づいてはいけないのでしょうか。恋人としてなどではなく、少なくとも友人として会うことができればと思うのですが。彼には彼の今の環境があると思うと、ためらってしまいます。
回答:鳥さんからのアンサー🐧
鳥です。この企画を持ちかけられた当初は、恋愛系の相談にはお応えしない方針でした。鳥はかならずしも色事に長けておらず、あまりお役に立てないと思っていたのです。
しかし、そうも言ってられないっぽい。ゲイコミュニティにおいて、恋愛というものは最大の関心事のひとつですし、鳥類としても、寄せられたお悩みをいっしょになって考えることで、人類というものをより深く理解したいと思うようになりました。
長く音沙汰の無かった相手に、連絡を取るべき?
さて、かつて関係を持った人に今あらためて連絡を取るべきかどうか、という問題。これはゲイであるかどうかに関わらない一般的な話です。ためらうのは当然ですし、たいへん悩ましいことだと思います。
今の状況はかなりリスキー。相手の心に波風が立つことは避けられない
率直に言うと、現在の状況で、彼に連絡を取ることはかなりリスクのあることだと思います。質問文の書きぶりを見るに、今のあなたには相当の未練が残っているようです。現在30代で、大学以来ということですから、10年になるでしょうか。
10年ものあいだ、音沙汰のなかった人からコンタクトを取られること自体、相手にかなりのインパクトを与える行為です。それも喧嘩別れしたかつての交際相手からの連絡となれば、嫌でも相手の心に波風を立てるでしょう。
「恋人としてなどではなく、少なくとも友人として会うことができれば」と目論んでいるようですが、はたしてそう簡単にいくでしょうか。
その目論見は成功するか?
10年という時間は、双方の怒りをしずめたかもしれません。その上で改めて関係を築くというのはあなたが思うより骨の折れる大仕事です。
はるか昔に肉体関係のあった人間から唐突に再会を求められることは、第一に、それなりの負の感情をもって迎えられるということを覚悟しなければなりません。
それを相手が快く思うか、新たに良好な関係を築きうるかは、その後のあなたの振る舞い次第ではあります。
しかし、あなたには下心がないとはいえません。同時に理性も備えているはずであり、それは必ずしもありのままの感情ではないかもしれませんが、今のあなたを動かすのが何らかの意味での下心であるということは認めなければなりません。
仮に相手が再会の求めに応じ、交流が復活したとして、その時あなたは本当に彼の「友人」でいられるでしょうか。
鳥はこう思います。あなたの頭の中には、「すでに彼とよりを戻すためのシナリオ」が書きあがっていると。
必要に迫られて作る人間関係は、依存に近い。双方にとって不健康になりがち
逆説的なことを言います(何度も言うけど鳥類はパラドクスが好きです)。
誰かの友人となるためには、その人がいなくても平気でなくてはなりません。なぜなら、孤独やさびしさなどの「必要」に迫られて作る人間関係は、それ自体にも一定の価値はありますが、基本的には依存に近い性質のものであり、長い目で見れば双方にとって不健康だからです。
あなたは今、その「必要」に迫られているように見えます。どのようなケンカが破局を招いたのかは、質問文からはわかりません。ですがいずれにせよ、会えない人は美化されていきます。会いたい側は会えない人を偶像化し、その偶像について自分に都合のよいストーリーや解釈を作り上げてしまうのです。
かつて付き合っていた彼のことを、友人として好きになれるか?
あなたは今まさにこの段階にあると思います。例えば、交流が復活し、友人としてふたたび彼に接近し、少しずつ信頼を回復したとします。その時あなたは、本当に「友人」でいつづけられるでしょうか。
鳥があなたの立場だった場合、それはきっとできません。鳥にもかつて好きな人がいました。その人は自分を選んでくれず、それを悔しく思いながら、下心にうすい親愛をまぶしながら、「友人」としてしばらく振る舞いました。ほんとうは、友人としての彼に興味なんてなかったのに。
その行動は私たちを幸福にはしませんでした。下心を隠し持っていたことを知り、彼は鳥を見損ないました。かといって、それを回避するために、自分があらかじめ何ができたかは、いまだに答えがでません。瓦解するまでのその関係が不適切であったことはまちがいないみたいです。
未練が残っている状態で会おうとしていることの脆さ
鳥がそこから得たプライベートな知見からすると、今のあなたが彼に連絡を取ることは、大局的に見て、劇薬を飲むかのように見えます。かなりの未練が残っていることが察されますし、そのような状態でふたたび誘いを受けるということは、相手にしてみれば多少の粘着を感じるものです。
仮に一度は仲良しに戻れたとしても、何かの拍子にあなたがその気を起こし、彼にアプローチでもかけようものなら、苦労して築いた信頼は一瞬で崩壊しかねません。その場合に彼が受ける精神的なリスクを無視してこの問題を考えることはできないのです。それは、もしかしたら二度と会えないことより辛いかもしれないのに。
彼と会いたいなら、まずは彼以外の人間関係を充実させよう
もしどうしても、彼と交流を復活したいのならば、まずあなたが、彼を必要としないほどに自分の私生活を充実しなければなりません。具体的には、(いるかどうかは分かりませんが、)今の恋人や友人との人間関係を十分に、円滑に運営できるように尽力することです。
そして、日常が満ち足りた状態になったとき、もういちど考えてみてください。あなたにとって、「まだ」彼が必要かどうか。
さびしさに負けて選びとったものは、手元に長くおくのが難しい。突然の雨に降られてコンビニで買ったビニール傘を後生大事にはできないように。
かつてあった心を断ち切った時に、彼がどういう存在で立ち現れるか
下心にせよ恋心にせよ、捨てろと言われて捨てられるものではありません。それはあなたの非ではありませんが、他人をそれに巻き込んでよいということでもありません。
それらをいったんきれいに断ち切ったとき、あなたのなかで、彼がどういう存在として立ち現れるか。
そこに、あなたがたの将来の関係性のヒントが隠されているはずです。
期待や心配を頭のなかでこねくり回すのではなく、実際に行動として、能動的に毎日を充実させていきましょう。あなたが自分の生活を大切にすることは、彼の人生を尊重することでもあるのです。
なぜならそれは、他人の人生が自分とはひとまず切り離されていて、必ずしも思い通りにならないということを知り、実感するための、もっとも有効な方法論だからです。
まとめ
- 長く連絡を取っていなかった人に対して連絡を取ることのリスクを認識することから始めよう。相手の心に波風が立つことは避けられない
- 連絡を取ることで、良好な関係を再び築けるとは限らない。壊れてしまう可能性もある
- 孤独や寂しさを逃れるための、必要に迫られて作る人間関係は依存に近い。未練や心が残っている状態で会うのは、双方にとって不健康な関係になりがち。
- 彼と会いたいなら、彼以外との人間関係を充実させて、かつてあった心を断ち切ることが必要。断ち切れた時に、彼がどういう存在で立ち現れるかが、将来の関係性のヒントになるかも
回答者プロフィール
「鳥です。平々凡々なアデリーペンギンです。普段は東京の大学でいろいろな人語を勉強しています。ホットココアのシメにアイスココア」
編集部より
恋人同士であっても、思い通りにならないことばかりなのに、いわんや昔の恋人をや、ですよね。不健康な関係がダメだとは思いませんが、折角一緒に過ごしてきた仲ならば、長い友達になれるのが理想だと思います。まずは、身の回りのことを1つ頑張ることから初めましょう。僕も、筋トレがサボりがちになってしまったので、またがんばりたいと思います。
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