サマリー
- HIVに感染したマウスに、ある併用治療を行ったところ、3分の1のマウスが最長で5週間に渡りHIVの兆候を示さなかったという研究結果が発表された
- 併用治療は、長時間作用型の薬剤送達システム(LASER ART)と遺伝子編集技術であるCRISPR-Cas9を併用したもの
- 今回はマウスを用いた実験となるため、すぐに実用化には至らないものの、HIV治療が大きく前進するきっかけとなる可能性がある
併用治療によって、3分の1のマウスが最長5週間に渡りHIVの兆候を示さなかった
HIV治療の新たな光となるか。
テンプル大学医学部と、ネブラスカ・メディカル・センター大学の共同研究チームが、HIV治療に関する新たな研究結果をNature Communications誌で発表した。
研究結果は、HIVに感染した計13匹のマウスに、併用治療を施したところ、5匹のマウスが治療後最長5週間に渡ってHIVの兆候を示さず、検出不可能レベルにまで低下したというもの。
抗ウイルス剤によってウイルスの働きを抑制している間に、HIV遺伝子を除去する併用治療を実施
併用治療は、長時間作用型の薬剤送達システム(LASER ART)と遺伝子編集技術であるCRISPR-Cas9を併用した治療を指す。
抗ウイルス剤を長時間作用させることにより、数日間にわたってウイルスの活動を抑制することができる。そこへ、CRISPR-Cas9による治療を行うことより、HIVへ感染した細胞のDNAのうち、HIV関連部分を切断し、ウイルスの遺伝子を除去することができる。
片方の治療しか受けていないマウスからはHIVが検出された。一方、併用治療を受けたマウスは、全体の3分の1がHIVが検出不可能なレベルまで低下した。
HIV治療が大きく前進するきっかけとなるか?
以前、HELLOBOYSで取り上げた論文では、ヨーロッパの研究チームが抗レトロウイルス療法(ART)は、HIVを抑制する効果があるという研究結果を発表していた。
しかし、ARTはほぼ毎日の投薬が必要であり、様々な理由で服用が難しくなるケースが問題となっている。
今回はマウスを用いた実験であるため、すぐに実用化とはならないものの、根本治療が可能になる未来も存在する。HIV治療に対する明るい兆しとなるだろう。
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