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悩み: カミングアウトができず、飲み会で疲れます―鳥の頭で考えた(5)

こんにちは、ハロボ編集部です!火曜日はお悩み相談「鳥の頭で考えた。」の日です。回答者は、アルファペンギンとして鋭いツイートを日々発信する鳥さんです。

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悩み:カミングアウトができません

20代男性です。大学の友達にカミングアウトができません。大学のサークルに所属していると、飲み会がよくあります。色々な話をざっくばらんにするんですが、恋愛の話になるときだけめんどくさいです。

彼氏のことを彼女に全ていいかえて伝えたり、言い換えるのが面倒で、付き合ってる人はいないと嘘をつくこともあります。飲み会は好きだけど、正直そこは疲れてしまいます。どうすればいいですか?



回答:鳥さんからのアンサー🐧

鳥です。このコーナーも今回でひとまず最終回。というわけで、寄せられた皆さんのお悩みの中でも、もっとも多くのゲイが抱えていそうな、カミングアウトに関するものを選びました。一鳥類の見解として参考にしていただけたら、と思います。

あなたは最終的にどうしたいのか

まず、質問文を拝読して疑問を抱いたのは、あなたはカミングアウトをしたいのか、したくないのか。言いかえると、ゲイであることを周囲に認知させた上で友達づきあいをしたいのか、もしくは、認知されず隠蔽しておきたいのか、という長い目で見た方針についてです。

もちろん誰もが自分の属性をなすがままに公開できればすばらしいですが、現状そのような理想を語っても埒があかないようです。

だからこそ、大切なのは、現実の生活の中で、自分が「最終的に」どうありたいのか、それを心の中で握りしめておくことだと思います。「彼女いないの?」と問われたとき、しっかり相手の目を見て応答できるように。

カミングアウトは、冷静かつ理性的に

鳥の考え方によれば、カミングアウトとは、状態ではなく一回性の行為です。つまり、自分がゲイであることを知らしめるには、相手方やコミュニティの数だけそれをくり返す必要があります。時と場に応じて、その規模には大小があると思いますが、問題は、その行為をどのような方略のもとで行うかです。方略と言うのはおおげさでしょうか。いいえ、カミングアウトにまつわる覚悟や弊害としてのリスクに思いを致せば、冷静かつ理性的に、慎重に行うに越したことはありません

鳥はこう思います。カミングアウトとは、セクシャリティに固有の問題ではなく、むしろ自立の問題、言いかえると自分にとって最適な人間関係を主体的に選びうるかどうかです。



恋愛の話をする必要がない間柄だからこそ

鳥はごく親しい友人にはほとんどカミングアウトしています。もちろん信頼できる友人たちだったからこそ、というのもありますが、カミングアウトした後で、彼らにはある共通点があることに気づきました。

それは、彼らとの話題の中心が恋愛ではなかったことです。話題は多岐にわたり、ときには恋愛についてすこともありましたが、、彼らはみな「いま彼女いないの?」とは聞いてきませんでした。

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そのとき鳥は彼らの存在のありがたさを逆説的に痛感しました。(お待たせしました、鳥類はパラドクスが大好き。)

恋愛の話をする必要がない相手だからこそ、鳥は彼らにみずからのセクシャリティを教えることができたのです。

プライベートな話題が多い人は、望ましくない対応をしてくるかもしれない

これが例えば恋愛やセックスの話ばかりしたがる人びとだったとしたら、鳥は同じように彼らを信頼できたでしょうか。ゲイかどうかにかかわらず、これは多くの人が忘れがちな事実ですが、恋愛にせよセックスにせよ、それはあらゆる話題のうちでもっともプライベートかつデリケートな領域です。

同時に、多くの人の関心事でもあるため、絶対的なタブーとまでは言えません。しかし、その領域に土足で踏みこんでくるような人は、ある種のモラルがはっきり欠けているのもまた事実です。セクシャリティを問わず、無意識であれ恋人がいることを当然の前提か規範のように押しつけてくる相手に対しては、それなりの用心をするべきだと思います。

恋愛を筆頭にプライベートな話題が多すぎる人は、あなたがゲイだとわかった後で、望まぬ対応をしてくるリスクが相対的に高いということです。それによって攻撃をされたり、心無い言葉を投げかけられたりする場合ばかりではないと思いますが、彼らの想定にない事実の暴露は、かなりのインパクトを与えるはずです。

恋愛なしでも会話に困らないことが1つの基準になるかも

もしも相手が(女性との)恋愛やセックスばかり詰問してくる相手やコミュニティならば、カミングアウトも慎重になるべきです。ヘテロにしてみれば、ゲイの恋愛事情は異質であり、異性のタイプやフェチなど性的嗜好の話題も共有できない。話題がなくなってしまうのです。

いまどき、ゲイであることそのものを、安易に批難する人は少なくなったと信じたいものですが、快く迎えられず、腫れ物に触るような扱いを受けては元も子もありません。ですから、カミングアウトをしたいと思ったとき、恋愛という話題をいったん差し引いて考えることが重要だと思います。

恋愛なしでも会話に困らないことが相手をはかる一つのものさしになりそうです。

精神的な気楽さは、持っているコミュニティの数に比例する

また、カミングアウトにあまり抵抗がなくなった要因として、学校を辞めて、1年間フリーター生活をしていたことがあると思います。在学中と異なり、もっとも信頼できる友人とだけ会うようになりましたし、職場でも信頼できるごく一部の人にはさっさと打ち明けてしまいました。仮にそれで居づらくなったとしても、当座のバイト先が変わることに何の恐怖もなかったのです。

それからまた別の学校に通いはじめましたが、そこでは誰もが第一に勉強の話をし、陰湿なゴシップなどはまず耳に入りません。恋愛の話題もごく一般的に話されるだけであり、個人の事情に立ち入るような人間がいないのです。いい意味で、カミングアウトをしたいと思わないのです。

しかし、ある一つの大学にだけ所属し、友人すべてが同級生だった学生時代には、とてもカミングアウトしようなどと思いませんでした。周囲がそっぽを向くのではないかと怖かったのです。そこは地方であり、サークルでは彼女のいない男がネタにされ、男性どうし友人が仲良くしているだけで「ホモだ」とからかう人間がまだ残っていました。

そういった経験からいま鳥が思うのは、「精神的な気楽さは、持っているコミュニティの数に比例する」ということです。これまでに関わったコミュニティそれぞれに少しずつ親しい関係ができたことで、その一つ一つが支えになっている気がします。

あえて薄情な言い方をすれば、ひとつを切っても他が残っていて、心に致命的な打撃はもたらされないのです。現代的な都市生活を営む上で「自立した人間」は、他人の助けを借りないのではなく、多くの人にちょっとずつ分野をすみわけられる人を指すのだと思います。

必要以上に傷つかないような人間関係をつくる

まるでカミングアウトを推奨する一方のような言い方をしているようですが、そうではありません。カミングアウトをするしないにかかわらず、何が起こっても心が必要以上に傷つかないような人間関係をあらかじめ主体的に構築しておくことが大切です。

冒頭に問題提起したように、かりにあなたが今後もゲイであることを言わずにおく場合であっても、大学の友人のみならず、「彼女いないの?」と訊いてくる人間にはどこかで必ず出遭います。ゲイであることを悟られないように、つとめて「“彼女は”いない」や「“恋人は”いる」と答えたとしても、あなたの心はその度にすこしずつひっかき傷をつけられてゆくでしょう。なぜなら恥じるいわれのない自分の姿を外圧によって隠蔽することを余儀なくされているからです。

しかし、たとえばそのような場に真に信頼できる友人がいるだけで、ずっと肩の力を抜くことができます。もし、そうと見こんだ相手なら個別的にカミングアウトしておくのも一つの手です。場に居合わせた人の好奇の目が過剰にあなたに注がぬようさりげなく助け舟を出してくれるかもしれません。

さらけ出せる場所を、できれば複数持っておきたい

それが難しければ、やはり当該コミュニティの外で、ありのままの自分をさらけ出せる場所を、できれば複数持っておきたいところ。家族であれ、友人であれ、SNSを利用して見つけた「仲間」であれ。

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ゲイであるか否かにかかわらず、ある特定のコミュニティ1点に極端に依存するのは、そもそもリスクが高いのではないでしょうか。人間関係に亀裂が入りかねない事件はいつどこで起こるかわからないからです。

私たちはどれだけそこに愛着を持っていても、自分がそのコミュニティから除外される懸念を心のどこかに隠し持っています。ある特定の話題について言及されたり、そについて弁明したりすることに疲れることがあるならば、それはカミングアウト以前の問題として、本質的にそのコミュニティへの依存度が高いことを意味しています。

相互に息抜きできる場所となる

複数のコミュニティを持つことは、相互に息抜きできる場所を持つことを意味します。すると、一つ一つへの依存度が低くなり、それによって必ずしもプライベートな話題に正直に答える必要も、またうまく場を取り繕ってよく思われる必要もないと気づくことができます。そういう対処ができるようになると、カミングアウトしていなくても、自身のセクシャリティを隠す日常への疲れが軽減されるのではないでしょうか。「プライベートな話は苦手です」、と一刀両断するのは失礼ではないのです。それはあなたの大切な部分だから。

そして、そのコミュニティの一つ一つに、あなたがゲイであることを理解している人がいるとだいぶ心は軽くなると思います。オープンにすることを勧めているのではなく、たとえ数は少なくとも、理解者の存在はそれだけであなたの心を癒します。わかってくれない奴らに悔しさをおぼえたとき、わかってくれる人の顔を思いだせたら、あなたはずっと楽に生きることができます。
そう言われても、頭が悩みごとばかり考えてしまい、心があてのない不安に溺れそうになることがあると思います。そういうときは、水族館に来て、アクリルの水槽ごしにようくペンギンたちを見てごらん。鳥たちはこんなにぷかぷかしちゃってさ、なんにも考えていないし、なににも溺れていないよ。そうしてあなたは、なにも考えなくても、なんとか溺れずに生きていけるような気がしてくるんだ。ほんとうさ。

まとめ

  • まずは、自分が最終的にどうありたいのか(カミングアウトに対してどういう姿勢を取るのか)を把握しておくことが大切
  • カミングアウトは、冷静かつ理性的に、慎重に行う
  • 恋愛なしでも会話に困らないことは、相手をはかる一つのものさしになる。プライベートな話題に偏ると、カミングアウトしたときに心もとないことを言われるかもしれない
  • 精神的な気楽さは、持っているコミュニティの数に比例する。何が起こっても心が必要以上に傷つかないような人間関係をあらかじめ主体的に構築しておくことが大切

回答者プロフィール

twitter.com

「鳥です。平々凡々なアデリーペンギンです。普段は東京の大学でいろいろな人語を勉強しています。ホットココアのシメにアイスココア」


編集部より

しばしばつきまとうカミングアウトの問題は、一筋縄ではいきません。その中でも、話題が偏らずに話せる間柄であるかどうかは、カミングアウトする際の指標の1つに加えてもいいかもしれませんね。

「鳥の頭で考えた。」は以上で連載を終了します。鳥さん、6週に渡る連載ありがとうございました!